住宅を取り巻く環境問題


 2004年に大学を卒業した私にとって建築業界は先行き明るいとは言えない時代でした。身近な問題として人口の減少により住宅が余る社会が予想されていたからです。国内においては2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行されました。これは2009年の「長期優良住宅の普及の促進に関わる法律」へとつながり、住宅を長く良好に使い続けられる資源としてストック化していくという取り組みへと発展してきました。環境科学部で建築を学んだ私にとって環境への配慮は少なからず意識されていて、環境への取り組みは無視できない課題であると考えています。

 建築が新築として建設されてから解体されるというライフサイクルの中で、排出されるCO2は我が国の全CO2排出量のおよそ40%になり、その内訳は建設段階(青)でおよそ7%、運用段階(黄緑)で32%、改修段階(赤)で2%となっています。(出展:建築物のLCA・LCC手法の国・自治体・民間での活用状況)
 このことから割合の大きい運用段階においての取り組みが重要であることが分かります。

 住宅の運用段階における省エネ対策については主に2方向からのアプローチがあります。一方は高効率の熱源機器の性能を高めたりHEMSといったITテクノロジーを駆使してエネルギー効率を管理しようとするアクティブなアプローチ、もう一方は建築の間取りや構成などを工夫して自然エネルギーを取り込み利用しようとするパッシブなアプローチです。目的は運用時のCO2排出量を軽減させることでどちらからのアプローチも背反するものではありません。また現代社会において機械設備を使わないというような生活は一般的ではありませんので、実際には両者の理論を混合したハイブリットな温熱環境を計画することになります。

 

 

 

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日記:建築士定期講習会

 

2017年01月29日