シンプルの先へ


 学生当時、僕が憧れていた建築家といえば、安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、SANAAなどが挙げられます。当時建築を志す学生ならば誰もが一度は興味を持つであろうスター建築家ばかりです。好きな建築家は?という問いに対してこのような返答をしていたので節操がないなどと言われたこともありますが、今思えば自分の目にはそのどれもが明快でシンプルなものという大雑把な解釈でつながっていたように思います。

 安藤氏の打ち放しコンクリートの表現と路地的な平面構成によるシークエンスの展開。伊東氏のせんだいメディアテークから始まる構造表現主義的アプローチとそれに伴う新しい内部空間の創出。隈氏の様々な素材による皮膜の取り扱いとその建築空間化への挑戦。SANAAの抽象化(空間経験の現象的な透明性)を追求した内部空間の展開とファサードの表現。いずれも各建築家の当時の取り組みに対する私見ですがそれぞれの作品は圧倒的に明快であり魅力的に感じられました。

 世界で活躍する建築家の作品を誌面で見たり実際に体験することを通して、感動を呼ぶ建築にはシンプルで分かりやすいテーマがあり、その空間表現がテーマにより導かれた秩序によって一貫性を持つことが重要なのだと気付きました。後に形態や空間からテーマや秩序を導くという逆の方向性もあるのだと知りますが、最終的に一貫性を持つという点では同義なものです。

 巨匠を引き合いに出してしまい恐縮ではありますが、自身の提案もシンプルであることを大事にしたいと思っています。これは恐らく今後変わることのない価値だと考えていますが一言シンプルといっても人によって受け取り方は様々です。次回から具体的に何をどうシンプルに扱うかについて少しずつ整理していきたいと思います。


多摩美術大学図書館/設計 伊東豊雄建築設計事務所 内部空間及び外観立面までが抽象的なパターンに変換された構造体により規定されています。システムを全面
に押し出したミニマルな表現は美術大学の図書館にふさわしい建築だと思いました。一貫した秩序による構成がひと目で感じられしかも美しい。優れた建築だと思います。

 

 

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独り言:敷地選びについて


2017年02月17日