木造建築文化とパッシブデザイン

 

 日本における木造建築物の構造は一般的に軸組工法と呼ばれるもので、柱を立てその頭を梁でつなぎその上に屋根をかけていく構造方法です。これにより柱と横架材(梁や長押等)に囲まれた部分は全て開口部となり、建具を開け放てば全面的に外部の自然とつながります。現代では寺社仏閣などを訪れるとこのような空間体験が可能です。このような日本古来からの建築のあり方が、庭の水面に映る月を楽しみ、床の間に季節の花を愛でるといった感受性豊かな日本人の暮らしを育んだのだと思います。

  木造軸組工法による建築物のあり方と、自然の循環を建築内部に取り込みそれを楽しむ暮らし方を私は美しいと感じています。建物の中に自然を取り込むという発想は木造軸組工法の建築物にとってはその構造上自然なあり方であり、それを楽しむ暮らし方もまた自然なあり方として現代を生きる我々の中に受け継がれているのではないでしょうか。

 このような日本の風土の延長線上にあるのが自然エネルギーを取り込んだ温熱環境対策としてのパッシブデザインだと考えます。
日本における木造建築物の文化。それにより育まれた自然を楽しむ暮らしのあり方。そして、自然エネルギーを取り込み利用するパッシブデザインという手法。
これらは私の中で一体的なのものとして統合され、これからの自分の住宅設計において積極的に提案していきたい価値となっています。


青蓮院門跡(小御所):横架材間は引き戸を開けることにより全面的に解放される。木造軸組工法の空間
的な特徴です。このような建築文化が感受性豊かな日本人の暮らし方を育んだと考えられます。




前回:住宅を取り巻く環境問題
次回:現代の縁側を求めて
   ブログ一覧へ戻る

日記:ソーラーシステム「そよ風」見学会

2017年02月01日