現代の縁側を求めて


 日本の住宅の発展の過程では優れた環境装置としての縁側が生み出されました。縁側とは建物外周部の縁にあり屋根又は軒の掛かった廊下状の空間をさします。特に内部空間であるものをくれ縁と呼び、屋外であるものを濡れ縁と呼びます。
 縁側では夏は軒の出で日差しを遮り、柱間を広く解放することで風を取り込みます。南中高度の下がる冬は太陽の放射を室内まで存分に取り込みます。くれ縁は空気層となり外部の冷たい空気が内部へ直接吹き込むのを防ぎます。
 既によく知られた縁側の役割ですが、自然エネルギーを利用したパッシブデザインという発想の原点はまさにこの縁側です。

 また住宅における縁側は、夏の夜にはうちわを片手に涼風を楽しんだり、冬にはお茶を飲みながら日向ぼっこするような姿がイメージしやすいように、季節を通して気持ちよく過ごすことができる空間です。また、近隣とのコミュニケーションの場として公と私をつなぐ場所でもありました。
 現代では建築敷地面積の減少、建設予算の削減、近隣とのコミュニケーションの質の変化などから本来的な意味を備えた縁側は少なくなってしまいましたが、かつての住宅にとっては暮らしに密着した欠かせない空間でした。

 縁側は魅力にあふれる空間ですが、私は自身の設計において古き良き縁側を直接的に復活させたいわけではありません。現代の建て主さんの暮らしに合わない場所を設けても仕方がないからです。目的はあくまでもその建て主さんにとっての豊かな生活空間の実現であり手法としてのパッシブデザインなのですが、現代の生活における縁側のような、環境装置でありながらも魅力的な居場所であるような住空間を考えていきたいと思っています。


民家の縁側から周囲の山並みを望む。日本の当たり前の風景として多く
見られた縁側ですが見かけることが少なくなりました。



 


前回:木造建築文化とパッシブデザイン
次回:芦川散策
   ブログ一覧へ戻る

書籍紹介:エアコンのいらない家

2017年02月03日|独り言:コンセプト